退院後・・・

 無事退院はしたものの、生活の制限がなくなったわけではありません。当分は自宅療養、普段は地元病院に通院、 二ヶ月に一度大学病院への通院という条件付きの退院だったからです。
 普段の私だったら、いてもたってもいられなくて、あちこち出掛けたことでしょう。でも今回ばかりは、自宅療養という理由で外出できない事を、 内心喜んでいました。理由は、プレドニンの副作用から来るムーンフェイスです。

 ムーンフェイスという副作用は、プレドニン(ステロイド)の代表的な副作用のひとつで、その名のとおり、顔が満月の如くまん丸になる症状です。 首から上がぱんぱんに浮腫んでしまうのです。はっきり言って、入院前とは別人のようでした。身内の人間は、あまりの変化にその事について触れないくらいです。  こんな顔で人前には出たくなかったのです。あまりにも浮腫んでしまって、顔の造作が埋もれているようでした。
 不運にも、入院中に車の免許の更新時期が来ていたので、退院後すぐに手続きに行きました。そこで撮った免許の写真・・・多分誰にも見せる事はないでしょう。

 誰にも会いたくない、顔を見られたくないという気持ちは、自分の性格をも変えてしまいそうでした。幸いにもプレドニンの減量と共に、 浮腫みは治まってきましたが、まだ元には戻っていません。いずれは必ず戻ると先生は言っていますが・・・

 失業保険の手続きをして、職安で斡旋している、緊急雇用対策の講習を受けられる事になりました。 10月から3ヶ月間、主に事務系の職業に就く為の講習で、 Word、Excel、商業簿記、電卓の4教科です。講習を受けている間も失業保険は支給され、学費は免除という好条件。 仕事で必要なかったので、Word・Excel共にほとんど経験なし。
 外出しなくてはいけない環境を作り出し、やっと前向きになって来ました。

 久しぶりの学校生活は、とてもとても楽しいものでした。勉強そのものは、クラスでひとりだけ受験する級を上げてしまったので大変でしたが、それも張り合いでした。
 一番良かった事は、クラスのみんなと仲良くなれたことです。運良く同世代の人が多く、終了後も有志で温泉に遊びに行ったほど。 やっと、人と付き合う楽しさを思い出しました。

 もうひとつ、勉強する楽しさも感じていました。年末に3ヶ月間の講習が終了し、更に上の級を取得するために、夜間の短期講座に通いました。今度は実費でしたが・・・(笑)
 ここでも友達ができ、先生とも親しくなれました。
 調子に乗って、関連のあるマクロVBAの講座も受講。
 その時、降って湧いたような話を持ちかけられました。

 休み時間、担当の講師に呼ばれて職員室へ。
 「仕事はもう決まりましたか?」
 いいえと答えると、仕事を斡旋してくれました。なんと、この学校の臨時講師の仕事です。しかも、ついこの間まで自分が通っていた、 緊急雇用対策の講習を受け持つというのです。
 勤務時間は受け持つ授業のみ。拘束時間が短い上に、この辺りでは破格の時給。もちろん二つ返事で承諾しました。
 やっと社会復帰の第一歩です。

 51日、大学病院の通院日でした。
 担当医師に連休明けから勤めることを報告し、その足で初めての一人旅に出ました。大阪に住む妹に会うという口実で、 東京〜大阪4泊の旅です。
 ずっと会いたいと熱望してた、ネットの友達とオフ会。東京・大阪合わせて、20人弱の友達に会う事が出来ました。  入院前からずっと、心の支えになってくれてた友達です。この旅行で、やっと自分に戻れたような気がしました。

 私は、これからもずっとこの病気と付き合っていくことでしょう。薬を常用し、生活に注意を払い、ずっと通院する生活・・・
 それでも、私はここにいる。
 確かに存在していて、これからも生きていく。
 私を支えてくれる、全ての存在に感謝しながら。
戻ル進ム