失ってしまったモノ

 "普通に見える生活"を維持するために、沢山のモノを失ってしまいました。
 仕事も続けられないくらいですから、10年続けてきたRACの活動も、諦めざるを得なくなりました。
 前出の通り、立ち歩く事も控える生活。スポーツは全面禁止。元々アウトドア派ではありませんでしたが、唯一やっていたスキーなども禁止。
 友達と出歩く事。
 夏のさなかに外に出る事。
 人混みは足を踏まれるかもしれない。
 毎年新しい傷跡が残るので、両足とも人前に出せるはずもなく、素足で外出は出来ません。そして、最も私を打ちのめした事実がありますが、これだけは公表する事ができません・・・。
 これらの制限が、段々私を蝕んでいきました。病気が、拭い去る事の出来ないコンプレックスとして、私の心の中に根付いていったのです。

 この頃、友達と会う事もままならなかった私を支えていたのは、ネットの世界と、そこで知り合った沢山の友達でした。 外出しなくても、自宅にいながらお喋りも出来る。それが嬉しくて、毎晩11時になるとモニタに向かっていました。

 それでも私は、置いていかれると言う不安を感じずにはいられませんでした。全てに自信がなくなっていくのです。
 自分の過失でも、不摂生でもないのに、どうしてこんな事になってしまったんだろう。どれほどの罪が、こんな罰を与えるのだろう。 そして、この精神状態は、ますます病気を悪くしていきます。
 「病は気から」と言いますが、まさしくその通りです。思い悩んだり、とても嫌な事があったり。精神的に不安定になると、 数日後、見てはっきりとわかるほど悪化します。

 99年の秋。
 今までなら、この頃には病状も落ち着いていました。
 ですが、当時の私の日常は、ある理由から安定というには程遠く、常に不安とプレッシャーの中にありました。この環境は病魔の力に荷担して、 体調は加速度的に悪化していきます。
 このまま病気が私の体を蝕んでいって、消えてしまえば楽になる。
 私は、病気に立ち向かっていく力を失ってしまっていました。
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