緊急入院

2002 7/9 Tue.  

 8日夕食後あたりから痛みが強くなり、ボルタレン50mg使用。効かない。 オーバードーズを覚悟の上で、4時間後また使用。やっぱり効かない。 あまりの痛みに悶絶しても、もう打つ手はない。
 救急車を呼んだ方がいいのか。このまま我慢していればおさまるのか。 時折遠くなる意識の中、着替えが出来なくてそのままの服が皺になる事を心配してたりする。 泣いたからってどうにかなるものでもないのに、悔しくて情けなくて嗚咽を漏らす。

 結局、朝通常の外来診察に合わせて病院へ。会社には休むとだけ電話で伝える。
 正面玄関から車椅子に乗って、母に付き添われる姿を見て、もうすっかり顔馴染みのナースが一番に診察室に入れてくれる。 経過を説明することも出来ないので、とりあえず痛み止めにソセゴン注射。少し楽になった。 昨日から14時間、激痛に耐えたことになる。
 さすがにそんなに続くと、精神的にも体力的にも限界で、ついろくでもない事を考えてしまう。 まだ人生を捨てる気はないので、ここには書かないで忘れる事にする。

 やっと主治医と話をする。診察も何も、この状態では何も出来ないだろうし、以前やった神経ブロックは入院しないと出来ないとのこと。 息も絶え絶えになりながら、それでもどうしても入院はしたくないと意思表示すると、主治医が付き添いの母の説得に向かう。 先生、その作戦は正しい。涙目の母を攻められたら、否とは言えなかった。そのまま半強制的に入院。

 外来で打ったソセゴンは、効くのも早いけど切れるのも早い。麻酔科受診の前に切れてしまって、幸か不幸か麻酔科の医師に悶絶する様子をしっかり見てもらう。
 神経ブロックは、ワーファリンが効いてるので、このままでは脊髄に血腫が出来る可能性が高くて出来ないとのこと。 応急的に、皮下に塩酸モルヒネ+キシロカインを24時間流して痛みを抑える。
 やっと傷に触れるようになって、診察。数日前からガーゼを取るたびに、むっと嫌な臭いがしていた。 足を洗えないからだろうと、傷のない足の裏、指の間を蒸しタオルで拭いたりしてたけど、拭いた後のタオルは臭わない。 どうやら何らかの菌に感染したらしい。臭いも、急激な炎症も痛みも感染による可能性が高いという。検査結果はまだ出ていない。

 潰瘍部分の処置は、シリコンガーゼにバラマイシンを揉み込んで患部を覆うように張る。滅菌ガーゼで包んで、包帯。

 朝家を出たきり戻ってないので、身の回りの事が何も出来てない。会社に電話して、入院してしまったことを伝える。 何も心配しなくていいと言ってくれた。本当にごめんなさい。申し訳なさで声が詰まる。

 それでも、断続的な痛みはあるけど、数日振りにまともな睡眠を得る。夜が明ける頃目を覚ました。

 これまで何度も、この病気の所為で挫折して絶望して、それでも頑張って生きていくと約束して、沢山の事を考えながらここまでやってきた。 本当に沢山の事があった。それでも必死に努力して、信用や仕事を少しずつ得てきた。それも、一瞬で崩れてしまう。
 まだ足りないのか。越えるべき試練はあといくつあるのか。がむしゃらになりすぎて、足元を見据えるのを怠ってしまった。
 悔しくて悔しくて、涙が止まらなかった。

7/10 Wed.  

 朝方と夕方に痛みが強くなるけど、持続的に流すモルヒネのお陰で、ボルタレンも効くようになる。 あの地獄のような夜に比べたら、話が出来るだけ快適。それでも動くと痛いので、一日中大人しくベッドで横になってる。 微熱とモルヒネの所為で、頭痛もする。

 ガーゼ交換のとき、シリコンガーゼを取るのが大変。くっつきにくい筈だけど、やはり部分的には傷に張り付いてしまって、はがすのに一苦労。

 考えない考えない。悪い事は考えない。
 自分に言い聞かせながら、ふと自サイトを更新せずに来た事を思い出す。せめてだれか代理で掲示板に書き込んでもらおうと、 いくつか心当たりにコンタクトを取るも、返事がない。一番頼れると思ってた妹はPCクラッシュ中(泣
 結局、心配して2度電話をしてきてくれた(出られなかったけど) T氏に代理をお願いした。口は悪いけど、いつも真剣に考えて、嘘のない言葉をくれる。ありがとう。

7/11 Thu.  

 いきなりの入院宣言で、みんなを驚かせてしまった。
 昨日掲示板に代理で書き込んでもらったメッセージに、沢山のレスがついているという。またしても代理人T氏に活躍してもらい、全てのレスを携帯に転送してもらった。 暖かい励ましの言葉、心配する気持ち。嬉しくて涙が出る。携帯にも沢山の友人からメッセージが届いている。
 忙しい中、えみの代理をしてくれという我侭を聞いてくれるT氏に、感謝でいっぱい。周囲に迷惑をかけないと生きていけないような自分でも、こんなに優しい人達がついて居てくれる。

 まだ諦める気はない。
 悪化したならまた治して、何度でもチャレンジする。

 相変わらずガーゼ交換のたびに悲鳴をあげる。それでも、これ以外では殆ど痛みを感じないのだから、随分楽になった。

7/12 Fri.  14:59:17

 この病気で入院するのは、もうこれで4度目だけど、いつも良いスタッフに恵まれる。 同室の人達も、みんな優しい人ばかり。でも例外もある。

 2度目の入院の時、同室になったおばあちゃんがとんでもなくワガママな人で、 直接被害はなくても聞いてるだけで腹が立った。

 昨日入院してきた19歳の子は、たったひとりでやってきた。若いのに偉いなぁと思ったのは初日だけ。 たった今、目の前では、彼女とその彼氏らしき人と、姉とその子供(推定10ヶ月と2歳)が 恐ろしいほどの騒ぎを展開している。
 特に姉。凄まじい言葉遣い。思わず顔をしかめてしまう程の口汚さで、ボリューム最大。 無論、大騒ぎしている子供を諌める気はない。これだけ騒いで周囲に迷惑を撒き散らしても、帰るとき挨拶一つしない。 あの母親に育てられる子供が可哀想だわ。

 昨夜4時から、塩酸モルヒネの量が30mg/24hに。

7/13 Sat.  20:42:36

 久しぶりに、寝付いてから一度も目を覚まさなかった。でも起きたのは4:30・・・ お隣のおばちゃまがアラームを鳴らしたから。
 寝惚け頭の思考状態は、
 「昨日も鳴ってたな・・・何か時間でやることがあるのかな。迷惑かけるのはお互い様だし、仕方ない・・・」
 ガシャン!ガサガサガタゴト・・・
 「ウルサイ・・・んん?何の音??」
 ラジオ聞いてますおばちゃま。ボリュームは絞ってるけど、イヤホン不使用。 ちょっと待てい、起床時間(6時)より1時間半も早いぞー!?
 胸に入ってる薬の針が痛くて気になってたので、ナースコールして処置してもらいつつしっかりと苦情を訴える。無論速攻注意。 まさか、ラジオ聞きたくてアラーム鳴らしたの?
 明日も起こされたらキレちゃうぞ。折角久しぶりのマトモな睡眠だったのにー。

 昨日はちかちゃんがお見舞いに来てくれた。今回の入院は、同じ病気で通算4回目。 掲示板を見る、数少ないリアル友達には知られるだろうなとは思ってたけど、今更友人知人に知らせるつもりはなかった。
 それなのに。
 いつも連絡はメールで来る友人から電話が来たので、アドレスを控えてなかったから、共通の友人であるちかちゃんに伝言を頼んだ。 それが大きな勘違い。数週間前に初めて携帯にかかってきたとき、登録する番号を間違ってたのだ。
 結局自分の勘違いで、自ら報告してしまう。
 あああ、ごめんねちかちゃん。でも来てくれて嬉しかった。 お花は大好きなので、一番良く見えるところに飾ってあるよ。ありがとう。

 R_K氏が、iモード対応掲示板を臨時で設置してくれた。
 ありがとう。みんな本当に優しい。
 書き込まれたメッセージを、一つずつ噛み締めるように読む。 暖かい励ましや、心配する気持ち。えみを和ませようと楽しげな書き込み。嬉しくて、あんまり嬉しくて涙が出る。
 いつもこうやって、えみは優しい人達に支えられて生きている。思うようにレス出来ないかもしれないけど、感謝してます。

7/14 Sun.  20:49:18

 入院以来、初めてマトモに電話をする。ベッド上安静なので、最低限必要な連絡以外電話出来なかったのだ。
 話したい人は沢山いるけど、公衆電話から携帯にかけると、通話料金がべらぼうに高い。 少し悩んで、入院以来サイトで代理人を務めてくれたT氏にかけた。 普段世話になりっぱなしなのに、更に我侭を聞いてもらったお礼を、どうしても言いたかった。 いつでもえみの言葉をキチンと受け止めてくれてありがとう。

 それにしても毎度のことながら、入院生活中の通信費は馬鹿にならない。入院にかかる費用の何%かを確実に占める。 何しろ相手からかけてもらうことが出来ない。ナースステーションにかけてもらうことも出来るけど、それは本当に必要な連絡だけだろう。 もっと回復すればロビーや玄関等に出て、携帯を使う事も出来るけど・・・
 あ、コレクトコールってテがあったか(笑)

 お見舞いに大きなしろたん@マザーグースの森を貰った。病室で思わず大騒ぎ。嬉しいよー。 携帯につけてる小さなしろたんと同じ、ペンギンの着ぐるみバージョン。これ多分枕だった筈。 着ぐるみ(枕カバー?)は脱がせる事が出来て、洗えるらしい。抱き枕に丁度良いサイズ。肌触りしっとり♪

 潰瘍部分に使っているバラマイシンは、かなり刺激の少ない、かぶれにくい軟膏らしい。 でもやっぱりかぶれてきた。薬が使えなくて、先生も頭を抱えてる。

7/15 Mon.  17:48:59

 携帯対応の臨時BBSに、病院内の携帯使用について、調査依頼を出した。 こっそりメールチェックしたりBBSに書き込んだりしてるけど、実際どのくらいの半径でどんな影響が出るのか、知りたかったのだ。 普段なら自分で調べるんだけどなー。つくづくネット出来ないと不便。
 その夜のうちに、えみ的二大ブレーンのふたりが回答してくれた。いつもいつもありがとう。
 それによると、ペースメーカーだと約20cm、 自動点滴機だと約10cm離れないと影響が出るらしい。 他にも、携帯電話から発生する電波が及ぼす悪影響が完全に否定しきれない以上、命に関わる器具を使用している人が周囲に居ないか、細心の注意を払う必要があるという見解もあった。 やはり基本的には電源を入れておかないほうがいいだろう。

 夕方BBSを覗いたら、446ra氏が専門的見地から回答してくれていた。
 確かにここのナースコールはPHSを使用している。廊下にある屋内アンテナを目ざとく見つけて、 PHSでデータ通信してもいいか聞いてみたけど、駄目だった。多分切羽詰った必要性があったり、 あるいは個室なら許可してくれたのかも知れない。 もっと長期の入院なら、PHSカード買って来たと思うけど、今回は2週間程度で済みそうなので、我慢。

 午後の回診で、退院について相談した。
 麻酔科の先生と相談して、14:20モルヒネを抜去した。 今晩モルヒネ無しで過ごして、外来処方の痛み止めで対処出来れば、あと2〜3日で退院出来るらしい。
 怖くてドキドキしてたら、2時間経過したあたりからピリピリと痛み出す。 気にしすぎなのかもと様子を見てたけど、更に30分経過して本格的に痛み出したので、ボルタレン50mg使用。 これで乗り切れなかったら、またモルヒネに逆戻りか、神経ブロックをすることになる。そうなるとあと1週間はかかる。
 先生に、痛くても我慢しないようにと釘を刺された。お見通し・・・

 抗生物質の点滴は今日で終わり。明日から内服に切り替わる。バラマイシンにかぶれて痒いので、夜から痒み止めにザジテンを13回。

7/16 Tue.  17:23:17

 モルヒネ無しで痛みを越えられるのか、かなり緊張していたけど、実際には10時前に眠ってしまった。 毎朝恒例の、隣のアラームが4:30に鳴るまで、ぐっすりと眠った。痛みはなかった。
 入院以来やっと2度目の、一度も目を覚まさない睡眠を取れたのに、何故か頭がすっきりしない。 起き上がるのもおっくなくらいだるくて、結局朝食の放送までうとうとしていた。 食事をしても顔を洗っても、一向にすっきりしない頭を抱えて、どうにもならないのでずっと横になっていた。
 お昼近くになってようやく回復してきた。
 気になって麻酔科受診のとき先生に、モルヒネの離脱症状があるのかと聞いてみたが、特にないと言う。 今度は回診時に主治医に聞いてみて、ようやく判明。昨夜から飲み始めた、痒み止めのザジテンの副作用だった。 眠気、全身の倦怠感、頭痛・・・症状も出始めたタイミングもぴったり。

 モルヒネを抜去してから、一度ボルタレンを使ったきり殆ど痛みを感じないので、このまま順調に回復していけば 金曜日に退院できると約束してもらった。
 職場復帰は様子を見て、勝手に判断しないようにといった事をやんわりと注意される。

 寝ても醒めても、気が付くとしろたんを抱きかかえてる。いいトシしてかなり恥ずかしいんだけど、半ば無意識だから仕方ない。
 そういや、科のナース達はまたしても年齢を勘違いしていたらしい。 一昨年の北大の時もそうだったけど、スッピンの方が若く見えるのなら、日常生活を考え直そうかな(笑

7/17 Wed.  19:35:52

 痛みから解放されたと思ったら、今度は痒みと格闘する。
 昨夜は猛烈な痒みで眠れなかった。2時近くになってナースコール。 先生の指示を仰いで、アタラックスPを注射してもらう。じき痒みは引いたけど、やっぱり眠れない。 後に時計を見たのは3:40
 浅い眠りの中、奇妙な夢を見た。

 昨夜の痒み騒動で、痒み止めが変わった。ザジテンは副作用が辛いので、夜だけ。 エバステル10mgを夜。日中はなし。

 午後の回診に合わせて、自分で足を洗う。 刺激性の石鹸を泡立てて、両手でそっと洗ってから生食で流し、周囲にはリンデロンV、潰瘍部にワセリンを塗って、滅菌ガーゼで保護。
 順調に回復しているので、退院は金曜午後に決定。

 臨時BBSを見ると、毎日書き込みがある。暖かい励まし、気を紛らわしてくれる楽しい書き込み。 ひとりじゃないって感じる事が、こんなにも力になる。

7/18 Thu.  21:28:20

 一昨日の晩は痒み、昨夜は痛みで眠れなかった。こんなに痛みを感じたのは久しぶり。 21:30にボルタレン、3:00にもう一度、更にガーゼ交換もしてもらって、やっと落ち着く。 結局何時間寝たんだろう。午前中いっぱい、霞みがかった頭を抱えて横になっていた。

 点滴や麻酔科受診がなくなり、回診も午後になったので、午前中はとりたててする事がない。 自分にできることは、少しでも体を回復させる事。そう思って可能な限り横になる。 この10日間の入院で、潰瘍は確実に塞がっている。やはり日常にももっと休息が必要なのだろう。 他人と比較してもどうにもならない。自分はこういう体なのだから。

 もっと自分を知って、先を予測して動こう。今回の入院騒動は、健康な人ならちょっと厄介な風邪に罹ったようなものだろう。 誰の所為でもない、自己管理が出来なかっただけ。

 病院内の介護用品のお店で、介護用の靴を買った。多少包帯をしてても履ける靴が欲しかった。 デザインは二の次。思ったより「らしくない」デザインで、足に負担をかけずに履ける靴があった。
 この靴を履いて、明日退院しよう。

7/19 Fri.  21:28:20

 昨夜も少し痛んで、20:10ボルタレン使用。 その後3時間でまた痛んできたけど、我慢できない程じゃなかったのでそのままに。 それでも睡眠の妨げにはなるので、寝つきの悪いまま何度も寝返りを繰り返していた。

 入院以来、初めて食事を自分で取りに行く。
 のんびり歩いてたら主治医に声を掛けられた。昨夜の様子、今朝の状態を報告。今日になってもまだ退院出来るか検討していた。
 大丈夫です、と元気に返事をした。予定通り、今日の午後回診後、退院。
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